レディニンジャの忍法帖

北の方に忍んでます、音楽・映画・本・アートなんかが好きです

2019/3/17 オン・ザ・ロード / ケルアック 訳・青山南

ケルアック自身の数度に亘る大陸横断記を小説にしたもの、ギンズバーグバロウズと並びビートニク文学の金字塔とされている作品である。登場人物のディーン・モリアーティが好きで好きで20代の頃から何度も読んだが今回は青山南さんの訳を初めて読んでみた。
現代っぽくより口語に近い感じの訳は読みやすいなぁ、言葉にテンポが出てきたようで、ケルアックの目指す形態(言葉でジャズのグルーヴを表現?)により近いのかもしれない。訳のおかげなのか、何度も読んでるからなのか、今回は以前よりケルアックの表現のみずみずしさを感じられた。
ーーーーこういうスナップ写真をぼくらの子どもたちはいつの日か不思議そうにながめて、親たちはなにごともなくきちんと、写真に収まるような人生を過ごし、朝起きると胸を張って人生の歩道を歩んでいったのだと考えるのだろう、とぼくは思った。ぼくらのじっさいの人生が、じっさいの夜が、その地獄が、意味のない悪夢の道(ロード)がボロボロの狂気と騒乱でいっぱいだったとは夢にも考えないのだろう。なにごとも、内側は終わりもなく始まりもなく、空っぽだ。無知がさまざまな悲しい形になる。(第4部より)ーーー
 
今回一番グッときた部分を抜粋しました。素晴らしい。映画、まさにロードムーヴィーを見ているようである、この物語には終わりも始まりもなく、起承転結もない。情景と感情と瞬間の積み重ね、とてもリアルだ。
 
福田実さんの訳も昔のアメリカを感じさせて良かったけど、これから初めて読む人にはこちらの青山南さんの訳がおすすめ。アメリカの現代文学の研究者としても素晴らしい方だと思います、巻末の解説や年譜の充実ぶりが尋常じゃないです!他の訳書も読んでみたい。
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